米作りの現場から〜畦道を焼く
2026/01/31
畦道で火をつける理由
米作りの仕事の中で、
いちばん好きな作業は何かと聞かれたら、
私は少し迷ってからこう答える。
畦道の枯れ葉を焼くこと。
派手さはない。
収穫でもなければ、見栄えのする作業でもない。
けれど、この時間には米作りの本質が詰まっている。
枯れ葉の下には、越冬する虫がいる。
最近は特にカメムシが多い。
春になれば田んぼに入り、稲に被害を与える存在だ。
火をつけるのは、情緒のためじゃない。
自然をきれいに見せるためでもない。
次の季節を守るための判断だ。
自然は優しいだけじゃない。
放っておけば、容赦なく奪う。
だから人は、手を入れる。
間引き、整え、燃やす。
畦道で火が立ち上がるのを見ていると、
季節が一つ、確実に終わるのがわかる。
同時に、次の準備が静かに始まっている。
誰に褒められるわけでもない。
数字に表れる成果でもない。
それでもこの作業をやるのは、
田んぼは、こういう積み重ねでしか守れないと知っているからだ。
米は、春に突然育つわけじゃない。
秋の収穫で完結するものでもない。
冬の畦道、枯れ葉の下、見えないところから始まっている。
今日も、火をつける。
静かに、淡々と。
次の稲のために。

